裏表 [MOVIE,ART&TV]
フランシスコッポラ、宮崎駿、リドリースコット、クリストファーノーランとともに、監督名で映画を観てしまう俺のフェバリットディレクター、デビッドフィンチャー。
デビュー作があの<エイリアン3>。公開当時酷評された作品だ。俺はエイリアンの第1作を当時中学生で週末にもかかわらずガラガラだった映画館で観たコテコテのファン。妻も最初にテレビで放映されたのを観たというかなりのファン。この第3作は妻とリアルタイムで映画館で観て、二人で<これしかありえない、最高のラストだね!!>と絶賛していたのだが、一般的には最低の評価。のちにボックスセットで再発された時もデビッドだけが映画のコメントを出していなかった。彼にとっては相当のトラウマらしい。あれはエイリアンという作品をきちんと理解している人間ならばあのラストしかありえないとちゃんとわかるはずなんだが。だから妻は<エイリアン4>を認めていない。
そんなデビッドフィンチャー。彼の作品は<セブン>、<ゾディアック>、<ドラゴンタトゥー>、<ゴーンガール>と順調に観ているが、この<ソーシャルネットワーク>はなんとなく地味なテーマで敬遠していた。
で、WOWOWで最近観たのだが。
やはりデビッドは天才だ。どんなテーマでも観させてしまう。素晴らしい。最近蜜月のトレントレズナーのサントラも最高だ。
ここに描かれているのは人間の純粋さと醜さ。テクノロジーの権化のようなSNSが、実は女心を理解しない男のちょっとした嫉妬心から生まれた、というアナログな事実(、かどうかは映画だから不明だが)。 とんでもない裏切りを、もしかしたら全然そう思っていない<しれっとした>とぼけ顏でやってしまう主人公。明らかに欠落している。でも、それが今の時代のリアルのひとつを作り出しているのだ。
俺はこの映画を観て、改めて思ったことがある。
絶対にFとかTとかで誰かと繋がったりなんか、しないって。それは俺もどこか欠落しているから。
一番怖いのは人間の<裏表>だ。 Fで作り物の明るい笑顔を振りまいてみんなと繋がって、Tで底知れない暗黒をつぶやく。そして他人を突き落とす。
下心見え見えの笑顔だったら、本心丸分かりの怒り顏のほうがまだましだ。