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救済 [Syrup 16g]

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無責任な<夢は叶う>だの<がんばれば大丈夫>だのの前向きソングが垂れ流されている今のJ-POPやらJ-ROCKシーンの中でやはりSyrup 16gの存在と言うのは異質なんだと思う。それは再結成前から変わっていない。でも、どうしようもないほどネガティヴなことばの洪水にまみれていることで救われる人生もある。

coup d'Etat

Syrup 16gの最高傑作と評される2002年の作品。俺はラフォーレ原宿新潟(何だこの名前は!)の今はつぶれてしまったhmvの試聴コーナーでこれを見つけた。当時俺は仕事場が変わったばかりで(親の跡を継いだ)期待していた色々なことが全くうまくいかず、素直だった(と妻は言う)性格もすっかりねじ曲がってしまって体調も最悪で(ひどい立ちくらみ、めまい、人前で頻脈など)どうしようもなかった。そんな中でこのアルバムを初めて聴いた時の衝撃はいまでも鮮明に覚えている。

My love's soldの<愛されたいという名の幻想を消去して、沈むよ嵐の船>というしょっぱなの歌詞がはっきりと聴こえた。15分以上はずっとそこに立ち尽くして試聴を続けていた。すぐにレジにこのアルバムを持って行って、仕事場に向かう車の中で何回も何十回も聴き続けた。どの曲もどの曲も暗黒でネガティヴなのだがなんか、ちょっと救われる感じもした。なぜだか未だにわからないのだが。不思議なことにそれから体調は少しずつ回復してきた。偶然かもしれないが。

俺にとって coup d'Etat  はそんな思い入れのある素晴らしいアルバムだ。徹底的なネガティヴは中途半端な前向きの何十倍も救われるのだ。ネガティヴを知っている人間は、その分定まったときには力強い。そしてその愛には嘘がない。

まさに救済である。